
普通の人は品質には金を払わない。同じ金を払うなら品質の良い方を選ぶけれども。だから、他でもできることがより良くできるという、いわゆる「品質」のみをアピールするマーケティング戦略は絶対にうまくいかないし、その商品の優位点が品質以外にもあることを客に理解させない限り、その商品は売れない。まして、品質が上がってもその分利便性が下がるというなら、そんな商品を買う人はごくわずかです。
池田信夫さんのblogの記事
引用:
しかし、もう一つの関係者が気づいていない問題がある。それはVTRでも不自由しないということだ。わが家のテレビは1999年、VTRは1998年に買ったもので、映像はかなりひどいが、買い換える気はない。テレビは見えればいいので、画質なんか気にしてないからだ。そもそも「ひどい」と感じるのは、私が昔テレビ局のスタジオ・モニターを見ていたからで、普通の視聴者はひどいとも感じていないだろう。
引用:
アンケート調査で、視聴者がもっとも望んだのは「見たい番組をいつでも見られるようにしてほしい」ということで、「たくさんのチャンネルを見られるようにしてほしい」という答も多かった。「いい画質で見たい」という答は最下位だった。だから今までと同じ番組の解像度を単に上げるだけの地上デジタル放送には、もともと需要がないのだ。
全く同感。つまり、視聴者のニーズは「見たい番組をいつでも見られるようにしてほしい」というところにあるのであって、「いい画質で見たい」とは思っていないのに、提供されているものは、「いい画質」ではみられるけれど、「見たい番組を違う時間に見ようと思うと制限がある」ものなのです。
HD-DVDやBDもしかり。「良い画質で見たい」と思っているのは小数で、それよりも「iPodに転送していつでも見たい」と考えるニーズの方がずっと多いのにそれが提供できていない。売れるワケがない。
「
アオバ自転車店」の次回のテーマは自転車の品質だそうです。1万円を切るような値段で、ホームセンターやスーパーで販売されているような安物自転車は自転車じゃありません。あれは「自転車によく似た形をしたオブジェ」です。それでも喜んで買う人は世の中には多いし、そんなオブジェでも1km程度の距離の移動には使えるし、調子が悪くてもそんなもんかと気にせず乗る人の方が多いでしょう。10万円のスポーツ車には、そういうオブジェに比べれば、またがっただけでもわかるほどの違いがあります。でも、そんな違いもせいぜい1km程度の移動にしか自転車を使わない人には大きな違いと感じられないでしょう。タイヤの空気が抜けてても、チェーンが錆び付いていても気にしない人は、耐久性が低くすぐ壊れるオブジェに乗っていても、そもそも壊れていることに気付きすらしません。
Windows Vistaが売れてないそうです。確かに良くなっている部分は多いようです。Administrator権限でのプログラムの実行を制限する機能なんかは、本当はこれだけのために移行してもいいくらいのセキュリティ品質の向上です。でも、それだけです。Vistaでなきゃできないことがあるわけじゃない。画面がきれいになった、セキュリティが向上したってのは、今まででできたことがより良くできるようになっただけ。いや、動かないソフトが増えて、むしろ今までできたことができなくなった。これじゃ売れないでしょう。
より品質の高いものが欲しいというのは、金を持っており、品質の高いものを使うということで自分のステータスを示すことのできる人達、すなわち貴族か、そのモノが好きで、他のことの優先順位を下げて好きなものに投資する人、すなわちマニアです。いずれも少数派。そんな人だけを相手にする商売だと言うなら、それはそれでアリだと思いますが、それならそれでそういうマーケティング戦略を取らないとダメでしょう。
品質の低いモノにはできない何かを作り、それをアピールしないと、品質だけを訴えても普通の人はを買ってくれません。それができていないんだから、売れない、普及しないのは当然なんじゃないでしょうか。